|
|
|
|
<ノベル>
その日はとても晴れたある日のことでした。
風が気持くふき、ぽかぽかと暖かい昼下がり。
おなかのすいたパイロ(cfht2570) 君はおいしそうお花を捜してその日もパタパタ飛んでいました。
パイロ君はオウムだけれどお花が大好きなのです。
銀幕市の港から公園までをパタパタ。
春も近いですが、なかなかパイロ君が食べたいと思えるお花がありません。
残念に思いながらパイロ君は住まいの海賊船まで戻ってきました。
パイロ君は海賊船のギャリック船長が可愛がっているオウムなのです。
そんなパイロ君が船長室へ戻ろうとしたとき、とてもいい香りがしてきました。
同じ海賊団のニグラ・イエンシッド(cnux5810) さんの部屋からです。
パイロ君は誘われるかのようにパタパタと飛んでいきます。
おなかもぺこぺこでしたが、パイロ君はがんばりました。
ニグラさんのお部屋につくと、パイロ君はとてもとてもおいしそうなお花をみつけたのです。
いい香りもその見たこともないお花から漂ってきていました。
見ているだけで、パイロ君のおなかはくきゅ〜と鳴ってきます。
なんと、パイロ君は思わずそのお花を食べてしまいました。
今までの空腹が満たされ、とてもいい気分でパイロ君は船長室に戻りお昼寝をすることにしたのです。
しばらくすると、二グラさんが船長室に駆け込んできました。
「船長、私の観察していた花をご存知ありませんかねぇ……この銀幕市でも中々見かけない花なのでじっくり観察していたのですがぁ」
いつになくニグラさんは落ち込んでいます。
船長のギャリックは知らないと答えました。
パイロ君はそれで目が覚め、どうしようと内心びくびくです。
パイロ君がお花を好きなことは船長をはじめ皆知っていました。
「ありがとうございます。他の団員にも心あたりがないか聞いてきますねぇ……」
ニグラさんは頭をかきつつ船長室を出て行きました。
パイロ君は疑われなかった事に安心すると共に、食べてしまったことを後悔します。
絶対みつけてやろうと、パイロ君は誓いました。
団員にもニグラさんにも内緒でこっそりと……。
それがパイロ君のできる精一杯のお詫びだと思っていたからでした。
その日の夜。
銀幕市の飲み屋で、金髪の青年が手に絵を持ちながら聞き込みをしていました。
「なぁ、こういう花しらねぇ〜?」
「それが花ぁ!? ライオンかと思ったぜ」
飲み屋にいたサラリーマンにそんな風に返される金髪の青年。
自分の絵の下手さを突っ込まれ、怒りそうになるのを金髪の青年は抑えました。
実を言えばこの金髪の青年はパイロ君なのです。
パイロ君は夜になると人間の青年の姿になる不思議なオウムなのでした。
「花を捜しているんなら、こんなところより公園にいったらどうだ?」
「公園か! あんたさえてるな!」
不憫に思った飲み屋のおじさんがパイロ君に公園のことを教えてくれます。
手がかりをみつけ、うれしくなったパイロ君はおじさんにお礼をいうと風のように飲み屋を飛び出し公園へと向かいました。
しかし、時間は夜。
暗い公園では中々見つかりません。
それから、花が咲いていそうな広場や、山などを走り回ってパイロ君は捜しました。
服はボロボロで、金髪の綺麗な髪の毛もすすけています。
それでも、パイロ君はニグラさんの花を捜していました。
中々見つからず、月が高く上がりゆっくりと下がっていきます。
へとへとになったパイロ君はガラス張りの建物にもたれかかってそのまま眠りこけてしまいました。
翌朝。
『クゥ……ガァッガァッ!』
目が覚めたパイロ君はオウムの姿に戻ってしました。
しかし、休んでいた建物は銀幕市の植物園でその中にあの二グラさんの部屋にあったお花があったのです。
これはチャンスとおもったパイロ君は植物園の中にはいり、一直線にお花に向かいます。
「こ、こら! 何だこのオウムは!」
お花の手入れをしていたおじさんにパイロ君は追いやられます。
事情をしらないのだからしかたありません。
今のパイロ君はただのオウムなのです。
『ギッギッ!』
箒のようなものではたかれてもパイロ君は目当てのお花に向かいます。
「こいつっ!」
おじさんもついに怒ったのか思いっきり箒のようなものでパイロ君をたたきました。
バシンと叩かれたパイロ君はごろごろと転がり、ニグラさんに拾われました。
「すみません、私の知り合いでしてぇ〜ご迷惑をおかけしましたぁ〜」
二グラさんはパイロ君が昨日の夜からいなくなった事に気づき、もしやと思ってきていたのでした。
「パイロさん、どうして昨日からいなかったんですかぁ? 心配したんですよぉ?」
やんわりとした笑顔でニグラさんはパイロ君に聞きます。
『パイロ……オハナ……タベチャッタ』
すると、パイロ君は昨日いえなかったことを言いました。
素直に謝ったのです。
「なるほどぉ、つまりあれはパイロさんが私に黙ってまでも食べたくなるような素敵な花ということなのですねぇ〜。こればかりは私の観察だけではわかりません。ありがとうございます」
眼鏡をかけなおし、二グラさんは汚れて、ボロボロになったパイロ君を撫でました。
「ニグラ……」
パイロ君の目から涙がポロポロと流れます。
「さぁ、かえってお風呂にはいりましょうかぁ。いい香りのするハーブを見つけてきたんですよぉ」
ニグラさんはパイロ君の様子を知ってかしらずかそのまま植物園から船へ向かいます。
パイロ君はニグラさんにとってもとっても感謝したのでした。
|
クリエイターコメント | 絵本風に仕上げてみましたがいかがでしたでしょうか? 久しぶりのこちらでの執筆ですが、ほのぼのとした題材であったため書き方を悩み、こういう形をとりました。
感想、リテイクなどありましたらお言いつけくださいませ。
このたびはオファーありがとうございました。 |
公開日時 | 2008-03-29(土) 20:40 |
|
|
|
|
|